アンセリンの作用
抗疲労作用
はじめに
魚類の筋肉中には、アンセリンやカルノシン、バレニンといったイミダゾールジペプチドが含まれています。これらのペプチドは生理的pHの範囲で高い緩衝能を有しており、筋肉pHの低下を抑制することで運動能力の維持に役立っていると考えられています。自然界では、遊泳能力の高い魚類や鯨類の筋肉中に多量に分布していることからも、その運動能力との関わりが注目されています。そこでマグロの筋肉中よりアンセリンを抽出、分離、精製し、これをマウスに投与した運動試験を行いました。
方法
マウスの強制遊泳モデルを用いて、アンセリンの抗疲労作用について調査を行いました。
6週齢のマウス20匹を2群に分け、対照群には注射用水、試験群にはアンセリン塩酸塩(200mg/kg body wt.)の水溶液を経口投与し、下記の試験を実施しました。
- アンセリン投与から1時間後、強制遊泳(体重の10%に相当するおもりを負荷)させてマウスが水面下に頭部を7秒以上沈めるまでの時間を遊泳時間として測定。
- 遊泳時間終了3分後および、30分後に針金を用いた懸垂運動をさせ、落下するまでの時間を測定。
- 試験終了後(アンセリン投与後、2時間後)に腹部大静脈より採血し、血漿中の乳酸値を測定。
結果
1. 遊泳時間
遊泳時間は対照群で162秒を示したのに対し、試験群では186秒と14.8%の延長が認められました。
2. 懸垂時間
1回目の試行(3分後)では対照群23.9秒、試験群で27.7秒でした。
2回目の試行(30分後)では対照群22.5秒、試験群28.6秒であり、いずれも試験群で15~27%程度の延長が認められました。
特に2回目の試行では対照群よりも試験群が有意に延長していました。(p<0.01)
3. 血漿乳酸値
血漿の乳酸値は対照群で32.6mg/dLであったのに対し、試験群では24.8mg/dLとなり、アンセリンを運動負荷前に投与することで、乳酸値が有意に低い値に抑制されました。(p<0.05)
また、血中のアンセリンは、投与2時間後には血中に移行していることも確認されています。この結果から、アンセリンは投与後速やかに血中に移行し、遊泳時間や懸垂時間の運動能力(持続力)を高め、疲労の指標である乳酸の増加を抑制するという抗疲労効果を持つことが示唆されました。
本研究は(財)食品産業センター「平成12年度 中小食品産業・ベンチャー育成技術開発支援事業」により実施されたものです。
基礎データ |
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作用 |
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